世間を騒がせるような、ネットでの不適切な投稿や行動、いわゆる「バカッター」や「バイトテロ」といったニュースが、定期的に耳に入ってきます。これらは、個人が手軽にSNSや動画を投稿できるようになった現代において、残念ながら昔から存在し続けている問題です。
投稿者は、その行動によって必ずと言っていいほど大きなペナルティを受けています。所属する組織からの処分はもちろん、損害賠償請求など、人生を左右するような事態に発展するケースも少なくありません。にもかかわらず、なぜこのような行為は繰り返し起こってしまうのでしょうか。
その根本には、主に二つの要因が絡み合っていると私は考えます。一つは「魔が差す」という心理、そしてもう一つは「承認欲求」です。
「魔が差す」という言葉は、普段は思ってもいないのに、一時の気の迷いで良くない行動をしてしまう状態を指します。もちろん、誰にでも軽いミスや失敗はあります。しかし、それがネット上で公開されることで、その規模は桁違いに拡大し、取り返しのつかない事態につながります。
そして、もう一つの大きな要因が承認欲求です。これは「誰かに自分を認めてほしい」「注目されたい」という根源的な欲求です。現代は、誰もが簡単に情報発信やコンテンツ制作ができる時代です。クリエイティブな活動や特技を通じて承認欲求を満たすことができれば理想的ですが、何も持たず、手っ取り早く注目を集めたいと考えた場合、過激な行動を取るという選択肢に走ってしまうことがあります。
平和的な手段で注目を集めるのが難しいと感じると、「炎上」という形で多くの人の目に留まることを選んでしまうのです。その結果、注目は集まりますが、それは社会的に許容されない「悪い注目」となってしまいます。
ネットでの軽率な行動がもたらす「深刻な代償」
では、実際に不用意な行動をしてしまった場合、その投稿者や周囲の人々にどのような影響、つまり「代償」が降りかかるのでしょうか。これは、一時的な問題ではなく、その後の人生を永続的に左右する非常に重いものです。
デジタルタトゥーが消えない未来
最も深刻な代償の一つが「デジタルタトゥー」です。一度ネット上に公開された情報は、たとえ本人が削除したとしても、第三者によってコピーされたり拡散されたりするため、完全に消すことはほぼ不可能です。
例えば、私のこのブログもそうですが、WordPressのようなシステムで公開された記事は、運営者が自ら削除しない限り残り続けます。もし誰かの炎上事例を私が記事として取り上げ、そこに情報が残ってしまった場合、その情報を削除してもらうには私に直接依頼しなくてはなりません。さらに、私以外の多くのサイトやSNS、まとめサイトにも情報が残るため、それら全てを消し去ることは現実的ではありません。
つまり、不用意な行動の記録は、一生涯、インターネット上に「デジタルタトゥー」として残り続けるのです。
本人の人生と周囲への連鎖的な影響
軽率な行動は、本人だけの問題では済みません。それはまるで連鎖反応のように、周囲の人々の生活や未来をも破壊する可能性があります。
- 家族への影響
- ネットでの特定により、家族構成や住所が特定され、自宅に住み続けられなくなる可能性があります。
- ご両親の勤務先にも情報が及び、職種や状況によっては職を失う事態につながりかねません。結果として、一家の生活基盤が揺らいでしまいます。
- 将来のキャリアへの影響
- 賠償金請求や、最悪の場合は訴訟（裁判）を起こされる可能性があります。
- ネット上に残った経歴により、就職活動が極めて困難になります。特に、迷惑をかけた業界・業種への就職パイプラインが断たれてしまう可能性は高いです。
- 所属する組織への影響
- 学校や部活動、アルバイト先など、所属する全ての組織の評判や品格が大きく損なわれます。
- 部活動の存続危機や、学校全体の信用失墜につながり、同級生や後輩の未来にも悪影響を及ぼします。
- 動画・写真に映った第三者への影響
- 不適切な行動を一緒に行った友人や、その場にいただけの人も、同罪と見なされて社会的制裁を受けることになります。
ネットでの一瞬の行動が、本人だけでなく、家族、友人、学校、将来の全てを巻き込み、取り返しのつかない結果をもたらすという事実を知らなくてはなりません。
未来を守るための明確な対処法：どう行動すればいいか？
では、このような深刻な事態を避けるためには、私たちはどのように考え、行動すれば良いのでしょうか。
1. 「これぐらいなら大丈夫」という甘えを捨てる
未成年だから、軽い気持ちだから、と「これぐらいなら許されるだろう」という考えは通用しない時代です。ネット上では、その行動が社会的な常識や倫理観に照らして許されるかどうかが全てです。
- ブレーキをかける： 投稿する前に、その内容が「一般常識」として9割の人がやらないことではないか、誰かを不快にさせないか、迷惑をかけないか、を自問自答してください。
- 家族と周囲への影響を想像する： その行動がバレたとき、ご両親が仕事を失うかもしれない、自分が通う学校の評判が落ちるかもしれない、親しい友人が巻き込まれるかもしれない、という最悪のケースを具体的に想像してください。自分の行動の背後には、大切な人たちの生活と未来がかかっていることを強く意識することが必要です。
2. 承認欲求を満たす健全な方法を見つける
注目されたい、認められたいという欲求は、本来悪いものではありません。問題は、それを満たす方法です。
過激な行動ではなく、建設的で前向きな方法で承認欲求を満たすことを強くおすすめします。
- クリエイティブな活動： 音楽、美術、プログラミング、文章、動画制作など、何かを「作り出す」活動を通じて、人から評価を得る。
- スキルアップやスポーツ： 資格の取得、運動での記録更新、特定の分野での知識向上など、「努力と成長」を通じて尊敬や注目を集める。
これらの活動は、たとえ注目度が低くても、自分のスキルとして将来に役立ち、何より後ろめたさがありません。努力の成果が認められることこそ、真の承認欲求の充足につながります。
3. 危険な環境から自ら距離を取る勇気を持つ
もし、あなたの周囲に不用意な行動をしようとしている友人や知人がいる、またはそのような行動を強要してくる人がいる場合、それはあなたの人生にとってマイナスでしかありません。
- 拒否する勇気： 「これはダメなことだ」とハッキリと伝え、その行動を止めましょう。
- 手を切る決断： あなたの未来を壊す可能性のある行動に誘う人は、本当の友人ではありません。そのような人とは、勇気をもって距離を取り、関係を断つことが、あなた自身の未来を守る最善の策です。
まとめ
ネットは、使い方次第であなたの可能性を無限に広げる強力なツールです。しかし、一歩間違えれば、取り返しのつかない形で人生を破壊します。この違いを理解し、常に「後悔しない選択」を積み重ねていくことが、明るい未来への唯一の道です。
